平素より日本心理教育・家族教室ネットワークに対し格別のご理解とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
 さて、日本心理教育・家族教室ネットワークは、第23回研究集会を 2020(令和2年)年4月17日(金)~18日(土)の2日間にわたり、浦河町総合文化会館において開催させていただく準備をすすめておりましたが、コロナ禍の影響により、やむなく開催を見合わせ、延期せざるを得ない状況となっておりました。そのような中、依然として情勢は、見通しのつかないところもありますが、この度、多くの皆様方のご協力のもとWEB開催として準備し、開催をさせていただく運びとなりました。
 心理教育とは、「病気や障害、そのほかの問題を抱えて、知識もなく、相談もできず、途方にくれているご本人、ご家族に必要な知識や情報を知ってもらう機会を広げ、どう問題に対処するかを協働して考え、ご本人やご家族が自分たちの問題に取り組みやすくなり、何とかやっていけるという気持ちを回復する、そういうことを目指している支援法」であります。
 開催地である北海道浦河でも、今から40年以上も前に、依存症や統合失調症などをかかえる人たちや家族の自助グループ活動が立ち上がり、集団療法や宿泊研修など当事者や子供も含めた家族への心理教育や支援の地域ネットワークが創られていきました。そこから生まれたのが「浦河べてるの家」(1984)の活動です。
 この40年の変化を言い表すと、専門家主導の心理教育から協同の時代を経て、地域ベースで、より当事者や市民主導の心理教育が模索される時代となったことです。そして、浦河の経験から学んだのは、心理教育は、地域の歴史や文化、過疎化などの地域経済の現状、災害などの課題も取り入れながら、地域を巻き込んだ形で展開される時代となったことです。
 私たちは、この40年の間、人口が4割も減り、地域経済が疲弊するという過疎化の波に洗われる中で、この地に心理教育の種を蒔き、地域に根を張りながら、安心して暮らす場の創出にチャレンジしてきました。その中から「当事者研究」というあらたな当事者の知と経験を創造する営みを生み出し、全国に発信してきました。この度の大会を通じて、日本と言う社会の「苦労の縮図」とも言える北海道、浦河の地で、全国の皆さんと共に学び、交わり、今を活かす新たな知の創造にチャレンジしたいと思います。
 「変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから」(清水義晴)、このスピリットを皆さんと共有しながら、「未開の知を耕す心理教育」の可能性を皆さんと一緒に探り、確かめ合いたいと思います。
 それでは、北海道の大地でお待ちしております。イランカラプテ!(アイヌ語で”こんにちは””ようこそ”)